必殺技?木の葉落とし。
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目次
秘儀!木の葉落とし!
先日地上波で放送された「紅の豚」の主人公が斜めの巴戦に入った時にマンマユート団の面々が叫ぶセリフ。
「捻り込みだ!豚はあの技でアドリア海のエースになった!」
おかげさまでたくさんのYahoo、Google検索から当サイトにご来訪頂きありがとうございます(笑
捻り込みについては、すでに「必殺技」へ記事を書かせて頂いております、もし未読でしたらご一読頂ければ幸いです。
さて。
知人から質問を受けました。
「木の葉落としって技もあるらしいじゃん。木の葉落としってなに?」
さて。いったいなんでしょう?
木の葉落とし。困ったときのウィキペディア。
木の葉落とし (マニューバ)
- 敵機に背後につかれた状態から急上昇し、意図的に失速状態を起こす。
- 敵機に背後につかれた状態で、機体を90度(主翼が地面に対し垂直となるよう)旋回させることで、失速状態を起こす。
失速した自機を敵機が追い越したところで、慣性による姿勢制御で失速状態から回復。相手の目をくらましつつ背後に回りこむ機動である。その際の挙動が、さながらヒラヒラと舞い落ちる木の葉の様に見えたことから名付けられたと思われる。
当時の敵機が大型機だったことに対し、小型で機動性に優れた零戦ならではの戦術と言える。失速状態からの姿勢制御は、軽量で操作性に優れた零戦なればこその機動と言えよう。
言えよう、って。さて、こんなマニューバ、実在したのでしょうか・・・。
筆者は断言する!木の葉落としは、使えない(除くマンガ)。
先に申し上げておきますが、この記事はかるーい気持ちで読んで頂ければ幸いです。
私は軍関係者ではありませんし、航空機の操縦ができる免許を所持しているわけでもありません。単なる一マニアでございます。
その前提で考察するならば・・・。
いかにも怪しいんですよね。
怪しいポイント1:零戦パイロットによる解説を見たことがない。
既に多くの、いやほとんどの零戦乗りの方が鬼籍に入られております。
- 坂井三郎
- 穴吹智
- 岩本徹三
- 藤田怡与蔵
これらは、ご存命のうちに手記を残された方々です。また、
- 杉田庄一
- 西沢広義
- 武藤金義
- 鴛淵孝
これらの方々は、第三者の方が伝記(と称して差支えないでしょう)を記録されている方々です。
これらの手記、伝記をほぼすべて私は読んでおりますが、「木の葉落とし」というワザについて記述は皆無なんです・・・。まあ、捻り込みについての記述も、坂井三郎氏の手記以外にはほとんど出てこないのですが。
怪しいポイント2:操縦方法に説明がつかない。
そんなデータの少ない「木の葉落とし」。貴重な図解が、ようやく見つかりました。こちらです。
・・・
気を取り直して。
ウィキペディアによれば
- 敵機に背後につかれた状態から急上昇し、意図的に失速状態を起こす。
とあります。コブラですか?
冗談言っちゃいけない、急上昇、つまりスティックをいくら急激に引いたところであの大低翼面荷重の零戦が失速を起こすわけがありません。また、
- 敵機に背後につかれた状態で、機体を90度(主翼が地面に対し垂直となるよう)旋回させることで、失速状態を起こす。
これ、ただの垂直旋回ですよね。どうやって失速を起こすというのでしょう。
ただでさえ失速特性のよい零戦です、ましてエレベーター(どころかどこにも)ブースターのついてない零戦ですからこの程度の操作で失速を起こすことはまず不可能でしょう。
怪しいポイント3:そもそもそんな操作では逃げられない。
グラマン社のF6Fは12.7mm機銃を主翼に6挺、仕込んでいます。
ベルト給弾式の発射速度が速くかつ大量の装弾数を誇りますから、時には600mという遠距離から打ち込んでくることもあったそうです。
600mは大げさとしても、200mの距離を取って背後について射撃開始。そこで仮に目前の零戦が急上昇を始めたら・・・。
そこにあるのはもっとも機体の面積の大きい主翼をさらしたカモでしかありません。いくら急減速をしたとしてもオーバーシュートするまでに十分な射撃時間があります。そう、コブラが実戦で使えない、と言われた理由と同じです。
ましてや空中戦は1vs1ではありません。1機のF6Fを躱してもその列機が襲い掛かります。
失速状態に陥った零戦は、空に浮かぶ的にすぎません。
ほとんどの空中戦は多数機vs多数機で行われます。
そして、ほとんどの場合、6時を敵機に取られたパイロットはスピードを維持したままラダーを蹴り、機体を滑らせて逃げ切ります。時には機体の外板に皺がよってリベットが吹き飛ぶほどの負荷を掛けながら。
まとめ
Speed is Life.
とあるイーグルドライバーがおっしゃった言葉です。
多数機が飛び交う空戦圏で速度を落とすパイロットはいません。ましてや、失速状態というアンコントロール状態に意図的に機体を放り込む操作は、自殺行為です。
あるとすればもうそれ以外に生き残るすべがない、破れかぶれの操縦でしかありえません。
後の時代に、ハリアーが成し得たマニューバーですがね。
原理的にはオスプレーも可能とか。
但し、失速ではなく
垂直上昇切り替えによる減速と上昇を使用して
敵機上方後方に付けると言うものですが。
さん、コメントありがとうございます。
VIFFですね。ただ、VIFFも木の葉落としのように実戦での意義はありやなしや?といったところが事実のようです。某サイトに以下のような記述がございます。
In fact, no conclusive evidence exists to prove that VIFFing was indeed the deciding factor in any engagement involving the Harrier.
細かいことで恐縮ですが、零戦は低翼面荷重機かと思います。
内容に全面的に賛成なだけに気になりました。
ビートビトさん、ご指摘ありがとうございます!!
わわわ、この記事は勢いで書いたもので(?)、肝心なところを間違えてしまいました。大きい翼、と低い翼面荷重がごっちゃになってしまいました。
訂正させて頂きます、お手数をおかけいたしました。
木の葉落としを盛大に勘違いしていました…
敵機ではなく、自機が失速するんですね
https://youtu.be/QvvGR03AJmc
(この動画の12分あたり)
ミリタリー勉強中さん、こんにちは。
そうですね、動画の機動は敵機の失速を誘う上昇反転でいわゆる木の葉落としではないです。いずれにせよ木の葉落としの信ぴょう性は疑問ですが・・・
これからもよろしくお願いいたします。