格闘戦の秘術

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格闘戦の秘術。

99%、役に立たないミリタリー知識。でも1%の人には役に立つかも。そんなお話です。

格闘戦。それも、ヘッドアップディスプレイも火器管制装置も後方警戒装置も敵味方識別装置もない、第二次世界大戦のお話です。

テクノロジのアシストが無いとはいえその激しさはある意味現代以上、最悪の空中戦といわれたマリアナ沖の戦闘では生還率は10%台とも言われています。

空中戦で勝利するためには敵機を自機の前方に捉える必要があります、そのために敵も味方もテクニックと全身の力と精神力を奮って空を舞い、弧を描いてドッグファイトを繰り広げます。零戦の時代は敵味方あわせて70機程度の大空中戦も少なくありませんでした。

空中戦に待ったなし。

空中戦に待ったなし。

台南空のエース、坂井。

台南空のエース、坂井。

対戦闘機戦闘に引き分けはありません。落とすか落とされるかの文字通りの死闘です。くんずほぐれずの巴戦の末、ようやく敵機を目前に捕らえていざ射撃・・・このときが一番危険な瞬間。同じように自分が別の敵機に追尾されていることがあるのです。

坂井三郎という、零戦乗りがいました。彼の手記より一部をお借りします。

・・・どこを見回しても零戦とグラマンが取っ組み合いをやっている。どの機もピンと伸ばした翼の端から同じように雲を引き始めた。グラマン、零戦、グラマン、零戦と一列になって巴戦をやっている。先頭のグラマンが火を噴いた。あっ、見事敵機を食った!手を叩きそうになったその瞬間、零戦は後ろのグラマンに落とされてしまった。そのグラマンもやはり落とされ、最後に残った零戦が急旋回をして戦場を飛び去った。私は背筋に悪寒が走り、恐ろしい悪夢をみるような気持ちでそれを見つめた。落ちる、落ちる、敵も味方も・・・

まさに油断大敵。目前の敵機に集中し最後の詰めを行う瞬間こそ自分も撃たれる瞬間、チェック6(後方確認)が必要な瞬間なのです。

彼は64機のキルスコアを残したいわゆるエースパイロットなのですが、

  • 一度も墜落・不時着したことがない
  • 一度も列機(部下)を死なせたことが無い

という類を見ない記録を持ちます(この記録を持つものは文字通り世界でただ一人坂井だけ)。

 

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若手への教え

坂井は若手に教えます。

「敵機を照準機の正面に捉えて、いざ射撃というときに必ず振り返って後ろを見るのだ。自分がチャンスということは敵にとってもチャンスという事だ。どんなときでもこれを忘れてはいけない。」

でも、後年の坂井曰く

零戦での射撃は100mを全力疾走しながら手に持った縫い針に糸を通すようなものです。名人ですら、全精神を集中させてそれこそ呼吸すら遠慮して撃つのです。後ろを見ていては絶対にあたりません。

なのです。坂井は若手には

「落とすことよりも落とされないこと」

を教えています。

そして新人が1回1回の戦闘を生き延び、中堅へと成長するときに坂井は言います。

「馬鹿だなあ。撃つときに後ろを見ていては絶対にあたらないよ」

坂井は教えます。後ろを見なくとも、撃たれない秘術を。

生き残るための秘術。それは確かに存在しました。

 

秘術。

坂井は語ります。

まず、自分が敵機を落とすまでに必要な時間を計算するんです。

そして、自分に一番近い敵機が攻撃を仕掛けてくるまでの時間も、計算するんです。もし自分が目の前の敵を5秒で落とせるとして、敵機が自分に襲い掛かるまで6秒あるとしたら、もう後ろを見る必要は無いんです。

1秒の猶予があるだけで満足してはAクラスとは言えません。せいぜいA’。その1秒を使ってその敵機も返り討ちにするんです。そして次の敵、次の敵・・・その空域にいる敵味方、全ての飛行機を把握していないと目の前の1機を落とすことはできません。

 

精神論でも運命論でもない、生き残る理由。

それは精神論でも運命論でもありませんでした。

6Gを超える荷重に負けて暗く歪む視界、自分の声も聞き取れない騒音、そして殺し合いの極度の興奮状態。その中でのきわめて論理的な計算が、彼の生き残りの秘術でした。

そして坂井はそれを証明するかのように、いかなる戦闘も潜り抜けます。硫黄島防空戦闘で15機vs1機の劣位戦闘を1発の被弾無く切り抜けるという離れ業をやってのけます。そして戦後彼はその経験を著書に記し、それは100版を超えるロングセラーとなりました。多くの外国語に翻訳され、イスラエル空軍が教科書に使ったなどという真偽不明のうわさがあったり、一時期は日本人が書いた本でもっとも海外で売れた本となっていたほどです。

強者が生き残るには理由がある。

そんな、お話でした。

 

参考図書

坂井三郎氏の著書としてもっとも有名。戦記としても、半生記としても秀逸。

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