戦車の形状

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戦車の形状。

うれしそうに語っても誰も聞いてくれないミリタリー知識、今日は戦車の形状です。

まあ、戦車だけではないのですが、兵器って結構「似て」いますよね。似てるだけならまだしも、ある「時点」を持って各国の兵器が「一斉に形を変える」ことがあります。

なぜでしょう?そのきっかけ、とは?

 

WW2

戦車。

なかなか実物を見る機会はありませんよね。プラモデルは作りましたか?たとえばタイガー戦車。

  • 画像はタミヤ模型様サイトよりお借りしています。

漢らしい。素晴らしい重厚さです。この戦車の特徴は

  • 強力・長大な88mm砲
  • 分厚く切り立った装甲

です。

そうです、板状の装甲をほぼ垂直に装備しています。これは恐らく生産性を考慮した結果だと思われます。ドイツの主力戦車であるタイガーはその整備性の悪さと過大な重量に苦しめられながらも、文字通り戦場の虎として君臨しました。しかし敵もさるもの、現れたのはコイツ。

  •  画像はタミヤ模型様サイトよりお借りしています。

ソビエトのT-34です。特徴は何をおいても

  • 傾斜した装甲
  • 幅広い履帯による機動性

です。

装甲版を傾けて装備することで、見かけ上の厚みを増やすことができます。斜めに弾が当たれば当然はじく確率も増えるわけで、単純なこの着想ですがこの試みは敵として対峙するドイツにとってショッキングな事件でした。当然傾斜装甲は大流行し、その後開発される戦車はドイツ・ソビエト問わずこの「傾斜装甲」を装備するのが当たり前になりました。

T-34ショック、なんて用語があるくらいの出来事なのでした(大事、テストに出ます)。

 

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WW2後

この傾斜した装甲は偉い、の法則は引き継がれます。たとえばこの戦車。

  • 画像はタミヤ模型様サイトよりお借りしています。

傾斜した装甲はそのままに、さらに車体は低くなっています。

ちなみにこいつの名は74式戦車、陸上自衛隊のまだまだ現役の車両です。富士の駒門駐屯地に行くと山ほど見ることができます。

ロシアの戦車は、丸っこくするほうに走りました。

T-72。74式のように低く構えかつ傾斜装甲を装備した車体、丸く鋳造された砲塔。傾斜装甲を備えかつ内容容積を多くとるには、丸い形状は理想的とも言えます。

そう、この形状が最先端であり、未来の戦車もこんな形のまま進化するはずでした。

 

現代

日本が誇る主力戦車(ですよね?)、90式。

  • 画像はタミヤ模型様サイトよりお借りしています。

あれ、あれれ??傾斜装甲はどこに?

ああ、日本はガラパゴスってるんだ。そうに違いない。西側諸国で最も陸上戦闘が発生しうるEUの戦車を見てみましょう。それなら傾斜・・・

レオパルド2。ドイツ戦車は一味違う!

レオパルド2。ドイツ戦車は一味違う!

  • 画像はウィキペディアよりお借りしています。

あれれれ??装甲版が垂直だ!タイガー時代に戻っちゃった?

 

装弾筒付翼安定徹甲弾

傾斜装甲を一気に時代遅れにしてしまったのは、一つの砲弾でした。

それは「装弾筒付翼安定徹甲弾」。通称、APFSDS(Armor-Piercing Fin-Stabilized Discarding Sabot)。

現代の戦車はたいてい120mm砲を搭載しています。これは大砲の穴の直径が12㎝であること示しています。それではそこから打ち出される弾の直径も12㎝?

いえいえ、弾の直径はわずか3cm程度なのです。

まるでダーツのような、装弾筒付翼安定徹甲弾。

まるでダーツのような、装弾筒付翼安定徹甲弾。

  • 画像はウィキペディアよりお借りしています。

12cmの枠(装弾筒)の中央に、直径3cm程度の細いダーツのような弾芯が挟み込まれています。装弾筒は120mm砲の火薬の凄まじいエネルギーを受け止め、かつ「発射後に離脱」します。

離脱するサボ。

離脱するサボ。

  • 画像はウィキペディアよりお借りしています。

はじけ飛んでいるのが装弾筒、Sabotです。Sabotの語源は木靴です。ちなみに「仕事をサボる」のサボはこのSabotであり、労働者が仕事をサボるために機械に木靴を放り込んで壊したことが語源だそうな。

細い重い弾芯はそのすべての離脱した軽量な装弾筒から全てのエネルギーを受け取り、毎秒1,500mという超高速で飛翔、ターゲットである敵戦車に命中します。

このスピードになると、傾斜装甲にぶつかっても砲弾は「はじかれません」。衝突時の凄まじい圧力で「砲弾は液体の振る舞いを見せ」「むしろ内部に屈折しながら」装甲を破ります。一説では10度まで傾けた装甲に対してかするように命中しても、はじかれるどころか食い込むような振る舞いで装甲をぶち抜いたという記録もあります。

ハッチ脇をかすった2発のAPFSDS

ハッチ脇をかすった2発のAPFSDS

  • ハッチ脇をかすった2発のAPFSDS。1発目は辛くも弾かれましたが2発目は「この入射角にもかかわらず」見事に砲塔内部に突入、致命的なダメージを与えています。

この弾丸が、すべての戦車の形状を変えてしまいました。

傾けた装甲はもはや意味がなく、むしろ弾丸の方向を「屈折させ」中心部に誘導してしまうということで一気にすたれてしまいました。複合装甲を垂直に装備することが最も効果的となり、また戦車の形状は重厚長大に戻りました。

最新鋭の戦車は前面をクサビ形状とし、あえて弾丸を中央部に誘導してそこで受け止める構造となっているものもあります。

  • 画像はタミヤ模型様サイトよりお借りしています。

装甲が傾斜させたのもテクノロジーなら、傾斜装甲を一気に時代遅れに追いやったのもまたテクノロジーです。

兵器に飾りはありません。機能が、技術が形状を決めます。すべての形状には理由があるのです。

一つのテクニカル・イノベーションが兵器の形状を決定した事例をお話しいたしました。

蛇足:やっぱりタミヤは凄いなあ。

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4 Responses to “戦車の形状”

  1. 名無し より:

    役に立ちました!w
    WTで「傾斜装甲って何だ?」と疑問に思って探した所ここにたどり着き弱点も効果も知ることができとても助かりました!ありがとうございます

  2. yakumili より:

    お役に立ててなによりです!

    個人的にはこのページで一番のお役立ちネタは「サボるのサボは木靴」だと思ってますが!これからもよろしくお願いいたします。

  3. よぼよぼ兵 より:

    偶然たどり着きましたが、分りやすくまとめられていて大変感心しました。
     
    私は74式より年上のオールド・ミリオタですので、現代の超高速徹甲弾やHEAT弾の話をシロートさんに説明するのがいかに難しいか、よーく分ります。「ユゴニオ弾性限界」とか口に出しただけで、面倒くさがって逃げ出しますからね、彼らはw

    それにしても、

    >兵器に飾りはありません。機能が、技術が形状を決めます。すべての形状には理由があるのです。

    これは本当にいい言葉ですね。私が民間の「スポーツカー」や「高級車」とやらに魅力を一切感じない理由がまさにコレですw

    人殺しの道具かも知れないが、それでも兵器は美しい。それはそこに極限まで研ぎ澄まされた機能美があるからだ。そう思います…

    • yakumili より:

      よぼよぼ兵さん、コメントありがとうございます。

      >人殺しの道具かも知れないが、それでも兵器は美しい。

      もうこれは事実として認めざるを得ないと私は考えます。人殺しという究極の目的だからこそ文字通り命がけで進化し、
      罪作りなことに美しさも兼ねてしまう。

      認めるしかないでしょう・・・。これからもよろしくお願いいたします。

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