VTOL

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VTOL。

垂直離着陸機。英語で言えばVertical TakeOff and Landing、略してVTOL。

久しぶりの「恐らく役に立たないミリタリー知識」はこのVTOLをテーマにします。なんか、空母みたいな空母じゃない船も話題になっているようですし。

VTOL。

長い滑走路を必要とせず、ヘリコプターのように垂直に飛び立ち・着陸でき、いったん空に上がればいっぱしのジェット機のように飛び回れる夢の飛行機。

予告で載せたコンベアXFY-1ポゴやここで載せているトリープフリューゲル(右下)のように、「正気の沙汰とは思えない」試作機がごろごろしています。

恐らく、用兵者のみならず(風たちぬの堀越技師のような)開発者にとっても、VTOLは「夢の飛行機」だったのでしょう。

  • 国土が狭く、離島の多い日本によく適合する。
  • 護衛艦のはずなのにどう見ても空母のあいつにも、これを載せればもう無敵。
  • 某島を含めた離島にもこいつを配備すれば問題なし。

なーんて話をネット上でよく(本当によく)目にしますが、、、果たしてこれは本当でしょうか。

VTOL4種詰め合わせ。

VTOL4種詰め合わせ。

 

VTOLはめったに垂直に飛ばないのだ。

のっけから全否定入ります。
VTOLは、普段は垂直に離陸しないんです。

垂直に離陸しなきゃVTOLじゃないじゃん!バーティカルじゃないじゃんねー。

そうなんです。垂直離着陸戦闘機は、垂直に離陸しないんです。

飛行機はなぜ飛ぶのでしょう?
(パイロットの意地と根性?ちなみに旅客機は乗客の祈りで飛んでいるとか。それはさておき。)
翼があって、すごい速度で前に進むから揚力が発生して飛ぶんですよね。

どんなに軽量に作られたとはいえ、チタンとジュラルミンの集合体の戦闘機はハリアーですら運用時重量で10トンあります。

10トンの機体を「前に進まずに」「翼の恩恵(揚力)を受けずに」浮かすには、たいへんな労力が必要です。

 

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デッドウェイトの宿命。

ハリヤーの場合、ジェットノズルを強引に下に捻じ曲げる機構により、噴射圧を真下に曲げて、オーバーヒートで悲鳴を上げるエンジンに冷却水を吹き付けてなだめすかして、垂直に飛ばします。
フォージャーの場合、わざわざ離陸専用として垂直に搭載されたジェットエンジンを2機使って離陸します。
F-35Bの場合、離陸専用のリフトファンを搭載しています。

これらの

  • ノズルを強引に下に捻じ曲げる機構と冷却水
  • 離陸専用のジェットエンジン2機
  • 離陸専用のリフトファン

は、離陸してしまえば無用の長物、単なる重量物(バラスト)です。大変な重量です。

ライバルの通常型戦闘機はこのバラストがありません、この分機体を軽くできますし、大きいレーダーやたくさんのミサイルやガンを積めますし、速く飛んで鋭く曲がることができます。

戦闘機は勝つためにあらゆる努力をします。軽量化もそのひとつです。可能な限り薄く軽い材料を使い、軽め穴を開け、「生き残る」ために、不要なものは積まずに軽量化を計ります。

VTOLは「垂直に飛び上がるがために」、「飛び上がってしまえば不要な荷物」を抱え込む宿命にあるのです。

 

VTOLの真実。

事実、ハリヤーは垂直離陸するためには「ミサイルを積むことができません」。えー、まじで。えらくまじです。ミサイルを積むと重すぎて飛べないのです。そして90秒程度しか、空中停止できません。オーバーヒートを防ぐ冷却水が足りなくなってしまうからです。

じゃあ、どうやって戦争するの?

ハリヤーは普通の戦闘機のように滑走路を使って離陸します(ノズルを斜め下に向けて短距離離陸する)。
フォージャーは戦争ができませんでした、性能が足りなくて・・・。ソ連もVTOL持ってるぜ、て威張るためにしか使えませんでした。
F-35Bは未知数ですがそれでもAやCよりは弱いのでしょう。でもステルス機の特性を生かせば、そちらの恩恵で威力を発揮できるかも。

つまり

  • VTOL機はVTOLさせると闘うだけの武器が積めない。
  • VTOL機で戦争するためには(なぜか、短くてもいいんですが)滑走路が必要。
  • VTOL機は単純比較では、(余計なものを持っていない)通常型戦闘機には敵わない。

のです。

したがって滑走路のない離島にぽつんとVTOL機を配備しても、迫りくる攻略部隊を迎撃できないのです。
それならば、離島には山頂にレーダーを配備し、後方から空中給油機と通常型戦闘機、AWACSで強力なエアカバーを実現するほうが、現実的かつ効果的なのです。

 

VTOLの価値とは。

それではVTOL機は存在価値はないのか?いえいえ、そんなことはありません。

今VTOL機を使いこなしているのはアメリカ海兵隊。これは、世界中のあらゆる戦場に真っ先に駆けつけ、殴り込みを行う部隊です。

滑走路も占領できておらず、航空母艦もまだ到着していない、こんな状況下で、小型の強襲揚陸艦から出撃し限定的とはいえ空中戦力を確保できるのはVTOLしかありません。

このように「極めて限定的」な状況下でのみ、威力を発揮する兵器。これがVTOL機の正体です。

そう、そしてそんな限定的な兵器を運用できる国は、わずかしかありません。

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6 Responses to “VTOL”

  1. おなるど より:

    VTOLを使って相手の背後に回り込む戦術もあるんですよ

    • yakumili より:

      おなるどさん、コメントありがとうございます。

      VIFF(Vectoring In Forward Flight)を指してらっしゃるのであれば、机上でのお話にすぎず
      フォークランドを含めた実戦で使用された事例はない(役に立たない)という現場評価のはずです。

      もし実戦で使用されたソースをご存知であれば、ぜひお教えください。よろしくお願いいたします。

  2. レイ より:

    はじめましてレイと申します。
    この記事について疑問に思ったことがあるのですが、質問させてください。
    VTOL機の話の中でVTOLではないF-35Bが登場していますがその意図を教えて下さい。
    よろしくお願いします。

    • yakumili より:

      レイさん、ご投稿ありがとうございます。

      一応、F-35Bも垂直離陸試験に成功しておりますので含めております。
      そして本テキストは垂直離陸機能を持っていたとしても戦闘するだけのペイロードが稼げません、が
      メッセージですのでそれには合致すると判断し含めました。
      (なにしろ、話題の機体ですから)

      それ以外の他意はございません。

  3. C より:

    VTOLという単語がある機会で目に付いて、それがなんなのか知るために検索したらこちらにたどり着きました。
    ミリタリー知識など本当にまったくないのですが、垂直飛行できる戦闘機があるのはなんとなく知っていました、が、それがめったに垂直飛行しないという話はすごく面白かったです
    トリビアな感じがしますね笑 
    知識のない自分でも分かりやすく詳細にかかれていてつい読み込んじゃいます
    面白いお話ありがとうございます

    • yakumili より:

      Cさん コメントありがとうございます!

      そうなんです、軍用機はほとんど垂直離陸しないんですね。ですから、F-35は正式にはVTOLではなく短距離離陸垂直着陸機(STOVL機、Short TakeOff/Vertical Landing)にカテゴライズされていたりもします。

      短距離離陸と垂直着陸(実際には短距離着陸するんでしょうけど)を組み合わせて戦力を発揮します。

      本サイトはある程度おもしろおかしく表現しておりますが、そんな意外な「役に立たない知識」を取り上げてまいります。これからもよろしくお願いいたします。

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