エリアルール

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エリアルール。

空を飛ぶもの全ては重力という自然現象に打ち勝つ必要があります。それは自然界における物理的ルールであり、神様以外のありとあらゆる存在は、そのルールに支配されます。

浮力(空気との比重差による浮力、または推進力と翼を使用した揚力)を手にした物体は空を飛ぶことを許されます。

オットー・リリエンタールによる滑空飛行、そしてライト兄弟による動力飛行を経て、僅か120年で人類は超音速戦闘機という怪物を作り上げました。しかし、この怪物とて、ある「ルール」に縛られています。それが、エリアルールです。

 

究極がもたらす形状と美

戦闘機は、言うまでもなく戦闘マシーンです。自機に搭載できる限りの燃料と兵器を搭載し、できる限りの大推力エンジンを搭載し、できる限りの軽量化を施します。戦闘機の存在意義は「敵機の排除」「航空支配の実現」にあり、その目的を達するために必要なもの以外は一切搭載されていません。

すべての装備には理由がありますし、その形状には理由があります。

そう、「すべてのでっぱりとへこみには理由がある」のです。

ここで4機の戦闘機を見てみましょう。まずは我らが航空自衛隊主力戦闘機でもある、F-15。シリーズ初期生産期のA型は初飛行は1972年。

F-15

F-15、これは米軍使用のC型。

  • 正義の味方、空のロールスロイス、F-15。画像はウィキペディアよりお借りしています。

そしてライバルであるロシアのSu-27。初飛行は1977年。

Su-27

Su-27

  • これほど美しい戦闘機も珍しい、Su-27。画像はウィキペディアよりお借りしています。

非常に似通った形状であることがお分かり頂けると思います(いや、マニアなら「全然違う!」というだろうけど。

そしてこちらはF-18。

F-18

F-18

  • マグダネルダグラスだと思ってたらいつの間にかボーイング、F-18。画像はウィキペディアよりお借りしています。

そしてF-22。

F-22

F-22

  • ハイローミックスのハイ担当(笑)、F-22。画像はウィキペディアよりお借り、さらに左右反転させています。

すべて双発、双尾翼の戦闘機ですが、「主翼」-「垂直尾翼」-「水平尾翼」の配置が、非常に似ていることに気づかれましたか?具体的には、「主翼」と「水平尾翼」の間に「垂直尾翼」が配置され、それらは少しだけ重なっています。

エリアルール解説 F-22

エリアルール解説 F-22

F-15なんてこの配置にするために「水平尾翼」の基部をテールブームとしてかなり伸ばしてますし、F-18は空力的に不利になることを承知で「垂直尾翼」をかなり前方に配置しています(尾翼は機体を安定させかつ運動させるため、重心よりできるだけ遠くに置きたいものなのです)。

こうまでして

  • 「主翼」-「垂直尾翼」-「水平尾翼」の配置

の配置を守りたい理由はなんでしょう。

そう、そこには「ルール」があるから、なのです。

 

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エリアルールとは。

遷音速(マッハ0.8~1.2前後)で飛行する物体が、音速突破付近で発生する抗力の増加を防ぎ、音速突破を容易とする設計技法を指します。

何だそりゃ?

わかり易く誤解を恐れずに言えば、「音の壁を容易に突破する」ためのお約束、です。

音速突破は飛行機にとっては難作業です。飛行体が音速を突破する際、衝撃波が発生します。

言い換えれば「飛行機が自ら衝撃波を作り出す」のです。

衝撃波を作り出すことで、飛行機はその運動エネルギーを造波抵抗(自ら波を作り出すことで消費してしまう無駄な力)として奪われてしまいます。これは、音速突破の瞬間、抗力(飛行機を後ろ向きに引っ張る力)が一気に増大することを示します。その量は1.5倍~1.6倍と言われます。推力の1/3を食われてしまうわけです。

この非常に大きい造波抵抗を突破するためには

  • ロケットでもなんでも、バカ推力のエンジンを付けて強引に突破する
  • 降下することで重力の恩恵を受け、高度を速度に変換する

しか、無かったのです。大戦末期には2重反転プロペラを装備した日本陸軍の試作機が、垂直降下で音速を突破したという未確認記録があります。この記録は「衝撃降下90度」として戦後に発表され・・・げふんげふん。

さて。

この「音の壁」をスムーズに飛び越える技術のベースは、最新の航空力学ではなく古来からある「砲弾学(という学問があるらしい!)」でした。大砲の砲弾の形状は、太古は石を削り出し、その後は鋳造した鉛や鉄で作った「球」でした。

  • こんなの。「球」の砲弾。

これをもう少し細長くして、先端から滑らかに成形することで飛距離と威力(=着弾速度)が大きくなることは、古くから知られた技法でした。

  • なめらかになった砲弾。これは旧ドイツ陸軍48口径75mm Kw.K.40の砲弾。

これは断面積の変化を緩やかにすることを指しています。

滑らかさ。球体の砲弾と進化した砲弾の断面積を比べるとこうなります。

砲弾の断面推移

砲弾の断面推移

さて飛行機。

子供が書くような飛行機の絵を用意しました。これを、先端から尾端まで輪切りにしていきます。

子供が書いたような飛行機の断面推移

子供が書いたような飛行機の断面推移

ね、

  • 主翼のところで急激に断面積が増大
  • 主翼が終わると急激に断面積が減少
  • 尾翼(垂直尾翼・水平尾翼)が始まるとまた急激に断面積が増大

となり、まったく滑らかではないことがわかります。

これにエリアルールを適用すると、こうなります。

エリアルールを利かせた機体の断面推移

エリアルールを利かせた機体の断面推移

  • 主翼のあたりの胴体を細くして断面積を調整する
  •  垂直尾翼と水平尾翼の位置をずらし、断面積の変化を滑らかにする。

この機体の音速突破は、エリアルール適用前と比較してはるかに容易になりました。

エリアルールを発見したのはNACA(後のNASA)所属の技師リチャード・ウィットカム。その功績によりコリア・トロフィー(アメリカの航空業界における最も権威ある賞)を授与されました。

 

事例1:YF-102

「YF-102」という戦闘機(試験機)がありました。

YF-102・・・のエリアルール適用前。

YF-102・・・のエリアルール適用前。

  • 寸胴なお姉さん、YF-102。画像はウィキペディアよりお借りしています。

超音速級戦闘機を目指して設計された彼女ですが、エンジンパワーが足りず何度試験をしてもMach1.0を超えることができません。そこでエリアルールを適用した「YF-102A]が作られました。

YF-102A・・・エリアルールでダイエット。

YF-102A・・・エリアルールでダイエット。

  •  ダイエット?で少しグラマラスになった、YF-102A。画像はウィキペディアよりお借りしています。

主翼中央(国籍マークの少し下あたり)近辺の胴体の幅をを少しだけ絞り込んで、機体後部の急激なすぼみをキャンセルしただけの機体です。わかりにくいでしょうか?それくらいの違いです。しかしこれだけの改造にもかかわらず、この「YF-102A」は試験空域へ向かう「途中の上昇中」にあっさりMach1.0を突破してまい周囲を驚かせた、という逸話があります。

 

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 事例2:ボーイング747

いわゆるジャンボジェットです。

え、ジャンボジェットのどこにエリアルールが?と思われると思います。実はあの特徴的な機体前方の2階席です。

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こちらは標準型というべき747-200。画像はウィキペディアからお借りしています。

もともと、といいますかもちろん、といいますか747はエリアルールを意識して設計されていません。音速を突破する機体でもありませんし。

747は多くのバリエーションを持ちますが短い胴体をもつSP(Special Performance)型は、その胴体短縮により相対的に伸びた2階席が「たまたま」主翼近辺まで位置し、エリアルール効果を発揮したことが認められました。抵抗が削減され、巡航速度が上がったわけです。巡航速度が上がれば経済性も改善されますので、その形状(2階席が主翼付近まで伸びている・・・Stretched Upper Deck)は、当時の新型である-300型の機体形状に反映されました。

Saudi_Arabian_Airlines_Boeing_747-300,_HZ-AIT,_SIN_3

SP型で得たエリアルール効果を踏まえ、2階席を延長した…といわれる、47-300。画像はウィキペディアからお借りしています。

 

「似ている」には理由がある。

ですから、先にあげた

  • F-15
  • Su-27
  • F-18
  • F-22

の「主翼」-「垂直尾翼」-「水平尾翼」は、エリアルールを意識したものなのです。

もっともMach(マッハじゃないよマックだよ)2.0等の超音速近辺のエリアルールはさらに複雑で、断面積を出すための輪切りを「垂直」に切るのではなく、Mach数に応じて斜めに切る必要があり、また斜めに切るってことはその切断面をぐるりと360度回転できるために非常に難易度が高い計算となります。

当然、スパコンの出番です。

最近の戦闘機はパワーがあるため、エリアルールを重視していないといった論説をネットで見かけます。しかし、尾翼配置を見ると決してエリアルールを軽視していないことは明らかですし、求める「ルールの適用」が

  • 遷音速(Mach0.8~1.3)

から、

  • 超音速(Mach1.3~5)

に移動したこと、エリアルール以外にも存在する形状上の制約があるから、でしょう。

それらに関してはまた書きます。

 

音速に挑んだ熱き男たちの伝説を読むのだ!

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