ハイローミックス

【スポンサード リンク】

ハイローミックス(High-low mix)構想。

※筆者追記:「F-35」の項も合わせてご覧くださいませ。

意外とミリタリーに詳しい人でも、いやむしろ詳しい人ほど使用してしまうこの用語。

どういう意味なんだろ、と困ったときのウィキペディア。検索するもなんと2014年6月時点において、英語版においても日本語版においても、該当ページがありません。

仕方ないので?ネット上でいろいろ言検索すると、要はこういう意味らしいです。

  • 高額高性能な兵器と低額低性能な兵器を組み合わせて戦力を構成する構想
  • 生産性や価格を考慮した時に高額高性能な兵器だけを揃えておくことは、予算にも限りがある以上できない。
  • 数が必要な状況もあるため、低額低性能の兵器で数を補う

という事らしいです。よくF-15とF-16の関係が、それであると解説されます。

性能と実績は折り紙つき、のF-15。

性能と実績は折り紙つき、のF-15。

  • ハイローの「ハイ」と言われるF-15。画像はウィキペディアよりお借りしています。
素晴らしくカッコいい、F-16。

素晴らしくカッコいい、F-16。

  • ハイローの「ロー」と言われるF-16。画像はウィキペディアよりお借りしています。しかし、カッコいいな。

ふむふむ、一見説得力ありそうですね。

 

事例。

確かに古今問わず、

  • 高性能・高額の兵器
  • 低性能・低額の兵器

を組み合わせた事例は数多くあります。

例えばWW2のドイツ陸軍。ドイツの戦車は高性能なことで定評があります。たとえばタイガー戦車。

 

  • 画像はウィキペディアよりお借りしています。

 

その高性能版、キングタイガー戦車。

  • 画像はウィキペディアよりお借りしています。

 

けーにひすてぃがー、と呼びたいのですが日本の誇る世界のタミヤさんが「きんぐたいがー」と記載しているからには「キングタイガー」なんです。「やーくとぱんたー」は「ロンメル」なんです!逆らうことは許されないっ!

ちなみにタイガーは30万ライヒスマルク、キングタイガーは35万ライヒスマルクというお値段だそうです。長砲身の88mm砲を備え分厚い装甲。高性能なことは折り紙つきのこのタイガー兄弟、しかし価格も強者。そしてその生産も決して容易とは言えず、常に数が不足している状態でした。

そこを埋めたのが俺たちのワークホースことIV号戦車。

  • 画像はウィキペディアよりお借りしています。

 

旧式な75mm砲は、長砲身といえどソビエトの戦車を抜くには力不足。

ではあるものの、戦後直前までこのIV号戦車の生産は続けられています。その価格は10万ライヒスマルク。1ライヒスマルクにどれくらいの価値があるかさっぱりわかりませんが(笑)、とにかくタイガー1両のお値段で3両揃えられる、ってのはわかりますね。

生産性も高く修理も容易。駆逐戦車ラングなど強力なバリエーションもあり、まさにハイローミックスのロー担当を、敗戦となったもののその最後の時まで見事に果たしたのです。

【スポンサードリンク】

それは意図された構想なのか?

しかし。

本当にこれらはハイローミックス、なのでしょうか?

ハイローミックスという構想のもと、計画的に「ローは生産され続けた」のでしょうか?

いいえ、ハイローミックスの解説をネットで漁っても、ドイツ陸軍の事情を「ハイローミックスの事例」として紹介されているケースはほとんどありません。先に挙げた条件に合致しているにも関わらず、です。

そして、「F-15とF-16の関係が、それであると解説されます。」と前述しましたが、実はアメリカ空軍のオフィシャルサイトを検索しても、「High-low mix」なるキーワードはヒットしません。

http://www.af.mil/SearchResults.aspx?Search=High%20low%20mix

ヒットするのは「high speed」とか「high-altitude」などばかりです。

注:Googleのサイト検索を活用すると、いくつか言及している資料が見つかります。コメント頂いた方に厚くお礼申し上げます。

ハイローミックスとは、いったいなんなのでしょうか。

 

天才ボイドという男。

ジョン・ボイド。

最終階級は大佐。アメリカ合衆国の戦闘機操縦士・航空戦術家・軍事著作家。通り名は「Forty Second Boyd(40秒のボイド)」。ACMの訓練において、40秒あればどんな相手のバックも取れるから。

40秒男、ボイド。

40秒男、ボイド。

  • 40秒男、ボイド。決して夜の話ではない・・・と思う。画像はウィキペディアよりお借りしています。

 

「なんで俺は強いのか(笑)」を分析した彼は

  • エネルギー機動性理論(E-M理論)

を組み立てます。

従来の「数を揃えてレーダーで敵を捕らえて太陽を背にしてガーンといってドーンと落す」といったまるで長嶋茂雄のような今までの空中戦を、熱力学の要素を参考にして(ホントかね)、理論で勝つ空中戦技法を体系化したのです。

非常に複雑な数式で書かれた理論ですが、大まかにはこんなところです。

  • より高い位置(位置エネルギーが大)に占位し、より速い速度(運動エネルギーが大)を持つ側(エネルギーの総和が多い方)が、ドッグファイトを制する
  • エネルギーを素早く使用し、そして失ったエネルギーを素早く回復できる軽量でパワフルな機体が優秀な機体である

ボイドのE-M理論は軍に認められ、彼は当時のF-X計画に参加します。

その機体はのちにF-15と呼ばれました。そう、空のロールスロイス、F-15。

空のロールスロイス。F-15。

空のロールスロイス。F-15。

 

今日に至るまで1200機が生産され数多の戦闘を経験、撃墜した敵機は115機を数えます。しかし撃墜されたイーグルが0機という、まるでアニメのストーリーのような圧倒的なワンサイドゲーム、圧倒的な強さを誇る名機。その開発チームにボイドは関わっていました。

しかし、そんな名機イーグルもボイドにとっては「理想の機体」ではありませんでした。具体的には重過ぎ、大きすぎたのです。

ボイドは「自分の理想の戦闘機」、すなわちE-M理論を完璧に体現する「イーグルよりももっと軽量でパワフルな」戦闘機を作りたくなりました。

ボイドは空軍で自らを含めた4人(ボイド、スプレイ、クリスティ、リッチョーニ)で「ファイターマフィア」を作ります。

 

嘘と偽り(笑)のハイローミックス。

おりしも「たまたま」進んでいた海軍のYF-17計画。

これは素晴らしく高価なF-14に変わる・補佐する機体を作ろうという計画があり、ボイドは同じことをするべきだと空軍に進言します。

みんな大好きトムキャット。ロービジも渋いと思います。

みんな大好きトムキャット。ロービジも渋いと思います。

  • 素晴らしく高価なF-14。画像はウィキペディアよりお借りしています。
安かったはずなのに、のF-18。じゃないや、YF-17。

安かったはずなのに、のF-18。じゃないや、YF-17。

  • 安くF-14を補佐できる・・はずだったYF-17。画像はウィキペディアよりお借りしています。

この時に初めて公式に「ハイローミックス」という用語が世に出た・・・と思われます。英字サイトをアサルト・・・じゃない、漁ると

The concept of the “high/low mix” was nominally born in the 1970s when two men, John Boyd and Pierre Sprey・・・

なんて書いてあります。

1969年、ボイドは数社のメーカーに声をかけ、

  • 離陸重量は9トン(F-15の半分)
  • レーダーも射撃照準用のシンプルなもの
  • 爆撃その他装備は不要

という、ボイドの「理想の戦闘機」を作るための数千万円の予算をぶんどることに成功します。「ハイローミックス」というでっち上げのキーワードをぶち上げて。

そう、「ハイローミックス」は単なる予算獲得のための

  • 後付け
  • でっちあげ

のキーワードだったのです。

ボイドは軽い戦闘機は作りたかったでしょうが、廉価な戦闘機を作って補佐的に配備、なんてさらさら考えちゃいませんでした。もとから彼は「補助的な戦闘機」ではなく「主力戦闘機」を作るつもりだったのでした。

その後F-17はF-18となりこれまた高価な戦闘機になりました。F-16も今や決してローとは呼べない戦闘機に成長しています。

誰だってハイを揃えたい。

ですから、「ハイローミックス」がピタリとははまるケースなんてありはしません。

あったとしたら、それは任務と数、そして予算の関係で「たまたま」「結果的に」「やむなく」そうなっただけです。これは「ハイ」ね、これは「ロー」ね・・・なんて計画はしません。

先に挙げたタイガー&IV号の例の含め、高額・少数の兵器と廉価・多数の兵器を組み合わせることは、珍しいことではありません。でも、それは「結果的に」そうなるわけで、「ハイローミックス構想による配備」ではありません。

天才ボイドの話はまた書きます。

※筆者追記:「F-35」の項も合わせてご覧くださいませ。

【スポンサードリンク】

9 Responses to “ハイローミックス”

  1. Nameless より:

    high-low mix site:af.mil
    とググれば、それなりに言及したページが見つかりますけど。

    • yakumili より:

      名無しさん、情報ありがとうございます。
      確認致しました。確かにヒットする記事がありました。(相変わらず、右上の検索欄に「high-low mix」と入れても何も出ないのが不思議ですが・・・。
      後日記事に追記しておきます、厚くお礼申し上げます。

  2. 犬神隆一 より:

    タイガーと4号をハイローミックスで語ろうとするのは少し誤りです
    あくまで、現代におけるハイローミックスはコストや量的なものであって、使えない兵器であれば生産が止められます
    そして、国家総力戦における生産現場では、しばしばコストは無視されます
    では、なぜ4号は生産され続けたのか・・・・・
    それは、タイガーが生産できる工場が限られていたからです
    生産現場におけるクレーンの重量制限や、タイガーの部品生産工場の少なさなどから、従来通りに4号も生産を続けたのです
    実際、ヒトラーはKV-1やT-34ショックで
    「全ての生産力をタイガーとパンターに集中しろ!」と命令を下したことがありました
    これを聞いたグーデリアンが直ちに命令を撤回して、タイガーに4号を随伴させる機甲師団構想を生み出しました
    もしヒトラーの命令を守っていたら、月産15台のタイガーしか工場から出てこないことになったでしょう(パンターはまだ改良が必要だった)
    もしそうなっていたら、ドイツはあっという間に敗北したことでしょう
    ただ、4号は完全に使えない兵器だったわけではなくそれなりの戦果はあげていたので生産されたのであって
    ほとんど役に立たなくなっていた3号は自走砲などのベースにする目的以外での生産は終了していました

    • yakumili より:

      犬神さん
      熱のこもったコメント、ありがとうございます。
      厚くお礼申し上げます。

      まず、ハイローミックス構想という言葉が世に出たのは(記事中にありますとおり)1970年代です。
      ですから、タイガーと4号が「現代でいうところの」ハイローミックスに一致しなくても、なんら不思議はありません。そもそもこの投稿の真意は

      ・ハイローミックスなんてファイターマフィアがでっち上げたキーワード
      ・ハイローミックスなんて普通のことで特別な構想ではない

      が、主題ですから、「タイガーと4号」がハイローミックスか否か、については「そうとも言えるし違うともいえる」が結論かと考えます。

      しかしながら、

      ・現代におけるハイローミックスはコストや量的なもの
      ・国家総力戦における生産現場では、しばしばコストは無視されます

      については、少々考察が必要かと思われます。

      ここでいう「コスト」は、単にお金だけを指しません。ここでいうコストは「兵器生産に充てることができる国家的な経営資源」を指します。そして経営資源とは「人・金・モノ」です。最近の経営学ではここの「時間・情報」を加えることが多いようですが。

      開発に必要な技術者。
      生産に必要なラインや技術、希少金属、そして熟練工。

      すべてコストです。

      戦時中とはいえ、国家が持ちうる総生産量を超える生産はできません。戦時中とはいえ、人モノ時間情報を含めたコストは絶対の制約であり、無視できる類のものではありません。

      そして持ちうるコストを「最高の兵器」のみに収集せず、「低性能の兵器」含め頭数を含めバランスよく分配・生産することが「ハイローミックス」です。

      >生産現場におけるクレーンの重量制限や、タイガーの部品生産工場の少なさ

      は、まさにハイローミックスの「ハイ」が抱えるコスト制約そのものです。

      >4号は完全に使えない兵器だったわけではなくそれなりの戦果はあげていた

      そして、多くの工場で製造できた

      は、まさにハイローミックスの「ロー」が抱えるメリットそのものです。

      したがってヒトラーの命令を愚直に守らず、4号も並行生産していたことは「当然の話」であり、またそれもいうならばハイローミックス・・・といえるのではないでしょうか。

      繰り返しますがこの投稿の真意は

      ・ハイローミックスなんてファイターマフィアがでっち上げたキーワード
      ・ハイローミックスなんて普通のことで特別な構想ではない

      が、主題、ですから「タイガーと4号」がハイローミックスか否か、については「そうとも言えるし違うともいえる」が結論かと考えます。

      これからもよろしくお願いいたします。

  3. nor より:

    ・ハイローミックスなんてファイターマフィアがでっち上げたキーワード
    ・ハイローミックスなんて普通のことで特別な構想ではない

    これは成る程と思ったが

    >ハイローミックスという構想のもと、計画的に「ローは生産され続けた」のでしょうか?
    >でも、それは「結果的に」そうなるわけで、「ハイローミックス構想による配備」ではありません。

    本文中のこれが分からない

    ドイツ陸軍で例を上げるなら、ティーガーとパンターの関係の方が適切ではないでしょうか?
    資金が潤沢であればティーガーの開発生産と並行してⅣ号のパンター更新、新型のパンター2開発が行われたと思いますが
    あるいは牽引砲と自走砲の関係とか、各種対空兵器とか、軍艦の大型艦と小型艦とか

    ボイドの唱えた厳密なハイローミックス構想は分かりませんがそっから派生して曖昧に使われているハイローミックスは、同系統の兵器で量が求められる任務と質が求められる任務があるのでそれぞれに最適化した兵器があると好ましいくらいの意味かと思います
    この場合資金さえ潤沢にあれば、ロー側も前世代の使い回しではなく新規開発を望むでしょうし、ロー側のボトムアップの結果ハイ側兵器が在庫分の使うけど新規生産されなくなったり(戦艦や攻撃ヘリとか)、ハイローの任務への専門化がそれぞれ独立した兵器ジャンルになる事もあるように思います

    「ハイローミックス構想に基づいてロー側が生産されて居るように見えるが、実際は別の構想による(ハイローミックスは普通の事ではない)」か「ハイローミックスは普通の事だがボイドの計画と現代戦闘機の分業とは別物」のどちらかなら分かるんですが
    駄文乱筆失礼しました

    • yakumili より:

      熱心なコメントありがとうございます。

      ハイローミックスなる用語の定義が「同時期に開発されたものを指す」とするならば、ご指摘の通りティーガーと4号よりもティーガーとパンターのほうが例としては相応しいかと思われます。ご指摘ありがとうございます。

      この用語も「いいだしっぺ」のボイドの手をすでに離れております。ボイドと共にこの用語を世に送り出したスプレイが「ハイローミックスはでっち上げ」と断言してしまっていることもあり、定義を深堀りすることは難しいのでは、と考えています。

  4. 自由 より:

    ココ最近、ハイローミックスじゃなくて「フォースミックス」という言葉もあるらしいです。

  5. 戦闘機マニア より:

    頭悪そうな記事
    F-22とF-35はコンセプト段階から明確にハイローミックス構想から生み出されてるし
    F-15とF-16にしたってそう
    予算の都合から生まれた産物に過ぎないって、当然でしょ
    限られた予算を可能な限り効率的に戦力に変換させる構想がハイローミックスなんだから

コメントを残す

CAPTCHA


サブコンテンツ

アクセス

  • このページのトータル訪問数:0
  • 今日の訪問数:23
  • トータル訪問数:1794
  • オンラインユーザー数:0

このページの先頭へ